2010年12月1日水曜日

建築保存の現在ーー報告

11月11日に開催されたシンポジウム「建築保存の現在」の
報告を、企画者の小澤京子さんがまとめて下さいました。
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/

今回は、登壇者が10月末には草稿とスライドのデータを交換して、
あらかじめ、議論の内容を確認するという周到さが
功を奏し、大変、内容の濃いシンポジウムとなりました。

これまで、私の研究の仕方は、小さな事実を積み重ねながら、
その関係性を語るというもので、実証的ではあるものの、
どうも事実の羅列に終わりがちだという認識がありました。

今回のシンポジウムで、田中純教授が
「保存」によって保たれるべきは、読み解かれるべき
過去のインデックスとしての、「ヴォイド」の不可視性である、
と発言をされていたのに、大変感銘を受けました。

建築とは、目に見えないものを可視化する
(例えば見えない神を可視化する宗教建築)
ものであるだけでなく、
そこにありながら、それは何かが欠けた状態で存在していることを、
想起させるものにもなりうる、ということです。

事実の積み重ねだけでは、論は不十分であり、
見えない事実の中にこそ、語るべきもの、表現すべきものがあるのです。

それがどういう建築創造活動になるのか、また、
建築保存の世界でどのような表現となっていくのか、
建築の創造と保存を繋ぐ話であったと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿